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2026.08.28

IP等級とは?~電気設備設計で押さえておくべき防塵・防水性能の基本

電気設備の設計をしていると、照明器具やコンセント、制御盤、ボックス類などの仕様で「IP44」「IP55」「IP65」といった表記を目にすることがあります。
この「IP」は、電気機器の防塵・防水性能を表す等級です。

屋外や水気のある場所、粉塵が発生する場所では、適切なIP等級を選定しなければ、機器内部への水や異物の侵入によって故障や漏電、短絡などにつながる可能性があります。

今回は、電気設備設計で押さえておきたいIP等級の基本と、設計時の考え方について解説します。

IP等級とは?

IPとは「Ingress Protection」の略で、電気機器の外郭(筐体)が、人体や固形物、水の侵入に対してどの程度保護されているかを表すものです。
日本ではJIS C 0920「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」などによって規定されています。

IPコードは、基本的に次のように表記されます。

IP○○

例えば、IP65 であれば、

「6」=固形物・粉塵に対する保護等級
「5」=水の侵入に対する保護等級

を意味します。

つまり、数字が2桁並んでいますが、それぞれ別の性能を示している点が重要です。

第1特性数字「防塵・固形物に対する保護」

IPコードの最初の数字は、固形物、粉塵などの侵入に対する保護性能を表します。

IP0○ 特に保護されていない
IP1○ 直径50mm以上の固形物に対して保護
IP2○ 直径12.5mm以上の固形物に対して保護
IP3○ 直径2.5mm以上の固形物に対して保護
IP4○ 直径1.0mm以上の固形物に対して保護
IP5○ 防塵形。粉塵の侵入を完全には防がないが、機器の正常な動作や安全性を損なう量の侵入を防ぐ
IP6○ 耐塵形。粉塵が内部に侵入しない

 

電気設備設計で特に目にするのは「5」と「6」です。

例えば工場や倉庫などで粉塵が発生する場所では、一般的な屋内用機器ではなく、IP5XやIP6Xなどの性能を持つ機器が求められる場合があります。

 

第2特性数字「水に対する保護」

2番目の数字は、水の侵入に対する保護性能を示します。

IP○0 特に保護されていない
IP○1 鉛直に落下する水滴に対して保護
IP○2 外郭を15°まで傾けた状態での水滴に対して保護
IP○3 散水に対して保護
IP○4 あらゆる方向からの飛まつに対して保護
IP○5 あらゆる方向からの噴流水に対して保護
IP○6 あらゆる方向からの強い噴流水に対して保護
IP○7 一時的な水没に対して保護
IP○8 継続的な水没に対して保護
IP○9 高温・高圧の噴流水に対して保護

 

ここで注意したいのが、数字が大きければ、必ず下位の試験条件をすべて満たしているとは限らないという点です。

特にIPX7やIPX8は「水没」に対する性能であり、IPX5やIPX6のような「噴流水」とは試験条件が異なります。
そのため、例えば「IPX6とIPX8の両方の性能が必要」という場合には、製品仕様を個別に確認する必要があります。

 

「IP65」はどのくらいの性能?

電気設備で比較的よく見かけるのが「IP65」です。

IP65を分解すると、

IP6X:粉塵が内部に侵入しない
IPX5:あらゆる方向からの噴流水に対して保護

という性能を持っています。

そのため、屋外照明器具、屋外制御盤、防水形コンセント関連機器などで採用されることがあります。

ただし、ここで注意したいのが、「屋外だからIP65にしておけば大丈夫」ではないということです。

設置場所によって求められる性能は異なります。
例えば、軒下なのか雨ざらしなのか、地面に近いのか、高圧洗浄を行う場所なのか、粉塵が多いのか、といった条件によって必要なIP等級は変わります。

 

電気設備設計では「設置環境」から考える

IP等級を選定するときは、数字だけを見るのではなく、まず設置環境を確認することが重要です。

例えば、次のような条件を確認します。

・屋内か屋外か
・雨が直接かかるか
・軒下などで雨がかりが少ないか
・水洗いを行う場所か
・高圧洗浄を行う可能性があるか
・粉塵が発生するか
・湿気や結露が発生しやすいか
・地面や床面に近い場所か
・一時的に水没する可能性があるか

同じ「屋外」であっても、建物の軒下と屋上では条件が大きく異なります。

 

IP等級が高ければ高いほど良い?

「それなら全部IP65やIP66にすればよいのでは?」と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

一般的に保護性能が高くなるほど、機器価格が高くなったり、選択できる製品が限られたりする可能性があります。また、密閉性が高くなることで、機器内部の放熱について検討が必要になるケースもあります。

電気設備設計では、必要な場所に、必要な性能を指定することが基本です。
過剰仕様にすると工事費が上がり、逆に性能が不足すれば故障や事故の原因になります。

設置環境と機器仕様のバランスを考えることが重要です。

「IPX4」「IP5X」のXとは?

IPコードには、

IPX4
IP5X

のように「X」が入る場合があります。

これは「性能がゼロ」という意味ではありません。
その特性数字を指定していないことを示す表記です。

例えば、IPX4であれば、水に対する保護等級は4ですが、第1特性数字についてはこの表記では指定していません。
逆に、IP5Xであれば、固形物・粉塵に対する保護等級は5ですが、水に対する等級は指定していません。

「X=0」と誤解しないよう注意が必要です。

 

IP等級と「防雨形」「防湿形」は同じではない

電気設備では「防雨形」「防湿形」「防水形」といった表現も使用されます。
これらとIP等級は、必ずしも単純に一対一で対応するものではありません。

そのため、

「防雨形だからIP○○」

と機械的に判断するのではなく、メーカーの仕様書やJISなどで、実際の保護性能を確認することが重要です。
特に設計図書でIP等級を指定する場合は、採用予定製品がその条件を満たしているか確認しておく必要があります。

 

設計だけでなく積算にも影響するIP等級

IP等級は、設計だけではなく積算にも関係します。

例えば同じ照明器具やボックスでも、一般屋内仕様 → 防雨・防水仕様 となれば、製品価格が変わります。

さらに、機器本体だけでなく、

・防水形コネクタ
・ケーブルグランド
・防水形ボックス
・防水コンセント
・パッキン
・シール材
・防水処理

などの付属部材や施工方法にも影響する場合があります。

積算時に図面上の機器数量だけを拾っていると、こうした仕様差を見落とす可能性があります。
特に屋外設備などについては、「何個あるか」だけでなく「どの仕様なのか」まで確認することが重要です。

 

IP等級だけで判断できないことにも注意

IP等級は非常に便利な指標ですが、電気機器の耐環境性能すべてを表しているわけではありません。

例えば、

・耐候性
・紫外線への耐性
・塩害への耐性
・腐食への耐性
・耐熱・耐寒性能
・耐衝撃性能
・結露への対策

などは、IP等級とは別に確認する必要があります。
例えば沿岸部では、十分なIP等級を持っていたとしても、塩害対策が不十分であれば機器の腐食が進む可能性があります。

つまり、IP65だから、どんな屋外環境でも使用できる というわけではありません。

IP等級はあくまで、外郭による固形物や水の侵入に対する保護性能を判断するための指標の一つです。

 

まとめ

IP等級は、電気機器の防塵・防水性能を判断するうえで重要な指標です。
「IP65」「IP44」といった数字を何となく見るのではなく、

第1特性数字=固形物・粉塵などに対する保護
第2特性数字=水に対する保護

と分けて考えると理解しやすくなります。

電気設備設計では、単純に高いIP等級を指定するのではなく、雨、粉塵、水洗い、水没などの実際の設置環境を把握したうえで、必要な性能を設定することが重要です。
また、IP等級の違いは機器価格や付属部材、施工方法にも影響するため、積算においても見逃せないポイントです。

設計図に記載された「IP65」という一つの仕様にも、機器選定や施工、積算につながる意味があります。
設計者と積算担当者の双方がIP等級の基本を理解しておくことで、仕様の見落としを防ぎ、より適切な設計、積算につなげることができるのではないでしょうか。

 

著者情報 AUTHOR


 
大学中退、就職した施工管理会社の倒産、仲間との起業、そして過重労働からの脱出など、あらゆる難局を越えてついにたどり着いた自分たちの理想の会社。経営者として分からない事ばかりだが、日々試行錯誤し、より良い会社にすべく奮闘中。
電気施工管理8年・設備設計事務所9年を経て、現在に至る。

 取得資格

- 第三種電気主任技術者   H11年12月取得
- 第一種電気工事士     H12年1月取得

- 2級管工事施工管理技士    H13年2月取得
- 建築設備士        H22年6月取得

- エネルギー管理士     H23年11月取得

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