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技術情報
2025.12.03
電気設備工事における設備項目【情報(LAN)設備編】
世界的にIT化が進むにつれて、情報(LAN)設備は電気設備工事の中でも重要度が年々高まっています。オフィスのネットワークはもちろん、工場の生産ライン制御、商業施設のPOS システムなど、業種を問わずネットワークはまさに「業務の生命線」であり、私たちの生活とも密接にかかわるものです。
本記事では、情報設備の基本から、設計・積算のポイント、現場で発生しやすいトラブルまで、実務で押さえておきたい要点を整理して解説します。
情報設備とは
情報設備(LAN設備)とは、コンピュータや通信機器間でデータをやり取りするためのネットワークインフラを指します。代表的には、LAN配線・光ケーブル・情報コンセント・情報ラック(MDF/IDF)・無線アクセスポイント(Wi-Fi) などが含まれます。
近年では、PoE(Power over Ethernet)対応機器の普及により、LANケーブルが電源線の役割も兼ねる場面が増えました。防犯カメラ、無線AP、IP電話など、さまざまな機器がLAN配線に依存しており、電気設備と情報通信の関係がますます密接になっております。
PoEについて、分かりやすい記事がありましたので詳しく知りたい方はこちらもご確認ください。
(https://canon.jp/biz/trend/poe)
設計のポイント
情報設備の設計では、電灯設備や動力設備と比べ、より将来性と可変性を意識した検討が求められます。特に重要なポイントは以下の通りです。
① 配線経路の確保と干渉対策
LANケーブルは電力線のような強電と近接しすぎるとノイズの影響を受け、通信障害の原因となります。
・金属管配管の場合は電力配管との距離を確保
・天井内ケーブルラックは強弱電が混在しないよう区画分け
・長距離敷設の際は光ケーブルへの切替も検討(LANケーブルの敷設は100m以内)
といった配慮が必要です。
② 機器配置・レイアウトとの整合
情報コンセントは利用機器に応じて適切な位置に配置する必要があります。特にオフィスでは、レイアウト変更が頻繁に発生するため、床下配線(OAフロア) や 天井からの吊り配線 が多用されます。将来的な席数増加を想定し、余裕を持たせたポート数計画も重要です。
③無線LAN(Wi-Fi)の電波設計
近年はオフィスや医療施設でWi-Fi主体のネットワークが増加しています。
・アクセスポイントの設置位置
・電波干渉の抑制
・必要なPoE容量
までを見越した設計が必須です。図面上だけで判断せず、現地構造(壁材質、梁の位置)を踏まえた調整が求められます。
専門性の高い内容となるため、メーカーと協力しての設計が必要です。
積算のポイント
情報設備の積算は、現場のレイアウト条件によって工数や材料が大きく変動します。主に以下がポイントとなります。
① LAN配線の本数と距離の精度
LAN配線は、距離や部屋位置によって大きく変わるため、図面とルートを丁寧に読み、敷設距離を精密に見積もることが重要 です。
②光ケーブルの敷設に伴う作業
光ケーブルの敷設には伝送損失の測定や成端接続も必要となるため、正確に読み取る必要があります。
③ 機器の仕様を正確に把握する
PoE給電機器が増えるほど、スイッチの容量(PoE budget)が重要になります。
・PoE+(30W)
・PoE++(60〜90W)
など規格に応じて必要なスイッチ台数が変わるため、対応機器の仕様を確認して積算に反映します。
④将来用空配管の敷設
電話設備同様、配線は電気設備工事とは別途の工事となる場合があります。
将来の配線のために配管ルートを見込んでおく必要があります。
情報設備の施工トラブル
情報設備は見た目では不具合が分かりにくく、試験や運用開始後にトラブルが発覚しやすい分野です。代表的なものを紹介します。
① ケーブルの曲げ半径不足
カテゴリ6A(LANケーブル)など太径ケーブルは、曲げ半径を守らないと通信性能が著しく低下します。配管内で無理に曲げたり、ラックで束ねすぎると試験NGの原因になります。
② 無線APの電波不良
設置位置が梁の影や金属棚の近くの場合、Wi-Fiの電波が弱まり、利用者から「つながりにくい」というクレームが発生します。電波設計の妥当性確認や現地での調整が必要です。
まとめ
情報(LAN)設備は、現代の建物における“デジタル基盤”として欠かせない存在です。配線のノイズ対策、機器配置、幹線構成、無線電波など、強電設備にはない多様な視点での計画が求められます。また、試験やHUBの仕様(PoE容量)など積算での注意点も多く、施工後の不具合リスクが潜むため、事前検討と丁寧な施工が品質を左右します。
業務のIT化が進む今後、情報設備の需要はさらに高まることが予想されます。電気設備工事の担当者として、基本を押さえつつ最新の技術動向にもアンテナを張り、実務に活かしていくことが大切です。
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著者情報 AUTHOR

大学を中退し19歳から社会人に。IT商材、不動産営業の経験を経て電気設備業界へ。元々電気設備業界である父親の縁があり、プランテクノに入社。積算業務の経験を積み、積算1課長に。現在は横浜市に拠点を置き、新規客先への営業も担当。
好きなことは「効率化」、好きな電設資材は「小さなプルボックス」。
取得資格
- 第一種電気工事士 R4年12月取得
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