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2025.11.28

電気設備工事における設備項目【電話設備編】

電気設備工事の中でも「電話設備」は、官庁物件では「構内交換設備」と呼ばれ、建物利用者の日常的なコミュニケーションを支える重要なインフラです。
メールやチャットの普及で電話の存在感が薄れたように見える時代ですが、企業活動・緊急連絡・受付対応・セキュリティシステムとの連動など、電話設備は今も建築通信設備の中心に位置し続けています。本記事では電話設備の基礎から、設計・積算のポイント、現場で起きやすいトラブルまで、実務に役立つ観点を整理して解説します。

電話設備とは

電話設備とは、建物内の固定電話同士の通話、および外線(NTT など)との通信を実現するための配線・機器の総称です。主に以下の機器と配線で構成されます。

● 主装置(PBX)

内線制御・外線制御を行う電話設備の中枢。
小規模では主装置+卓上機のビジネスフォン、中〜大規模ではIP-PBXを使用することもあります。

● MDF/IDF(主配線盤・中間配線盤)

NTT回線や電話主装置と、各部屋の電話端子を中継する配線盤。
他通信設備にも利用します。

● 電話用ケーブル(電子ボタン電話ケーブル、ICTケーブル、構内ケーブル他)

電話設備のケーブルにはさまざまな種類があります。
0.4mmや0.5mm径のものを使用することが多く、構内(TKEV)ケーブルは端子盤間や端子盤~MDF/主装置への通信幹線に使用されることが多いです。

● 電話(情報)コンセント(RJ-11/RJ-45)

電話機を接続するための差し込み口。
モジュラージャックとも呼ばれます。
電話回線に対してはRJ-11、IP電話等の通信回線にはRJ-45を使用します。

設計のポイント

電話設備は、建物の規模や利用方法によって必要構成が大きく変わります。設計段階では次の観点が重要です。

● 内線数・外線数の算定

従業員数・部署数・受付電話・会議室・停電時の対応など、多角的に必要台数を検討します。

【内線例】
一般事務所:職員数 × 0.8~1.0
受付・会議室:用途に応じて追加

【外線例】
業務量により変動しますが、従業員数の1/3が目安

余裕を持った計画でないと、竣工後に外線増設が必要になり、主装置・配線の手戻りが発生することがあります。

● 配線方式の選定(アナログ・デジタル・IP)

アナログ:FAXやエレベーター電話などで利用、停電時も使える電話機あり

デジタル(ISDNなど):ビジネスフォンで多く採用

IP電話:LAN敷設と併用でき導入が増加

建物全体のネットワーク構成を踏まえて、複数方式を併用するケースも一般的です。

● MDF/IDFの設置計画

縦配線の“中継点”となるため、EPS(電気配線スペース)とセットで下記の点に注意し、計画する必要があります。

ラック・盤の設置スペース

ケーブルの引き回し距離

将来の回線増設スペース

セキュリティ(入室制限)

特にオフィスビルでは、テナント入れ替えのたびに電話回線を再編するため、更新性・作業性が非常に重要です。

● 予備回線の確保

設計段階で予備を多めに敷設しておくと、将来工事のコストとリスクを大幅に減らすことができます。

積算のポイント

電話設備は材料単価が比較的安価な一方で、配線距離や端子作業の多さで工数が大きく変動します。積算では以下の点に注意が必要です。

● ケーブル長の正確な拾い出し

図面距離より実距離が大きくなりがちで、
配管経路の迂回、天井内のアップダウンなどにより図面距離から1.2~1.5倍になることもあります。

●メーカー見積手配

電話設備の機器を見積りする場合、機器仕様により製造メーカーが限定されるため、該当機器の取り扱いのある会社に対しての見積依頼が必要です。

● 将来用空配管の計上

電話設備工事は将来対応する場合など、電気設備工事とは別途の工事となる場合があります。
その場合は将来ケーブルを敷設できるよう、配線ルートに空の配管を敷設する必要があります。
端子盤やMDFへの引き込みに困らぬよう、漏れなく見込むことが重要です。

現場で発生しやすいトラブル

電話設備は構造がシンプルに見えて、実はトラブルが起きやすい分野です。

● 端子盤での誤結線

似た色のペア線が多く、工事量が多いと誤接続が発生しやすい。

● ケーブル損傷による断線・ノイズ

天井内やシャフトでの曲げすぎ、他設備との干渉で被覆が傷つき、
音声の乱れや不通となることがあります。

● IP電話の通信遅延・PoE不足

ネットワーク系統と密接に関係するため、
スイッチのPoE容量不足といったネットワーク由来の障害も多発します。

● MDF・IDFのスペース不足

EPSに複数業者の配線が集中し、電話ケーブルが後回しになり、無理な通線をすると将来のトラブルの原因になります。

まとめ

電話設備は、建物のコミュニケーションを支える通信網として欠かせない存在です。
近年はIP電話が主流となりましたが、アナログ・デジタル回線の併用も依然として多く、設計・施工・積算のすべてに幅広い知識が求められます。

MDF/IDFの確保

配線方式の正しい選定

ケーブル長の正確な拾い出し

誤結線防止の管理

予備回路の確保

など、細かな点が後の保守性・信頼性を大きく左右します。

また、実務では将来用空配管での対応となる案件も多くあります。
電気設備の工事範囲を事前に把握することも重要になります。

電話設備工事を正しく理解し、確実に設計・施工することで、建物の通信インフラの品質を大きく向上させることができます。

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著者情報 AUTHOR


 
大学を中退し19歳から社会人に。IT商材、不動産営業の経験を経て電気設備業界へ。元々電気設備業界である父親の縁があり、プランテクノに入社。積算業務の経験を積み、積算1課長に。現在は横浜市に拠点を置き、新規客先への営業も担当。
好きなことは「効率化」、好きな電設資材は「小さなプルボックス」。

 

 

 

 

 

 

 取得資格

- 第一種電気工事士    R4年12月取得

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